紅茶のはなし

紅茶小噺 〜お茶とティーカップ〜

紅茶小噺 〜お茶とティーカップ〜

紅茶に『ハマってしまう』方にも実に様々なパターンがあるようです。 ティーメジャースプーンやコゼ、ティーストレイナーなどお茶道具を揃えたり、カップをお好みでコレクションすることはそれだけでいつものお茶を美味しく感じ、一杯の紅茶を頂く時間も豊かにしてくれます。 高価なティーセットを少しずつ買い揃えていくのもそれ自体楽しい事ですし、ティータイムを盛り上げる重要な要素としてテーブルコーディネイトに工夫を凝らす方も随分増えていらっしゃると思います。

もちろん実際の紅茶の味も大事。 『ゴールデンルール』からはじまり茶葉の『産地』を経て、『農園』や『シーズン』にこだわり、茶葉によって入れ方も変えるのは当然、となるとこれはもう相当な方でいらっしゃいます。また利き酒ならぬ『利き紅茶』やお好みの味を求めてご自身で茶葉のブレンドを楽しむ方もいらっしゃるとか。

こうした『武闘派』を経て、世界のお茶文化、果ては紅茶史にまで興味の対象をひろげてしまった、という方もきっと少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。 英語で『ティー』(Tea)、フランス語で『テ』(the)、ポルトガル語では『シャ』(cha)、アラビア語で『チャイ』_お茶をさす多くの言葉の語源がお茶の木の原産国である中国の言葉の『テイ』や『チャ』にあるというのは有名な話ですが、さて、では何故コーヒーはコーヒーカップで飲み、紅茶はティーカップで飲むのでしょうか。 その説のひとつをご紹介いたしましょう。

『コーヒーはエチオピア原産で、イエメンからオスマン帝国を経て16世紀末にはローマに伝えられていた。 この伝播経路にある伝統的な焼き物の製法は所謂『タタラ成形』で、板状に延ばした粘土を筒状に丸めた後に底を付けるというもの。 現在のようなろ過器具のない当時は粉砕したコーヒー豆を煮出しそのまま上澄みだけ飲んでいたので、このような筒状の深いカップは比較的コーヒーを飲みやすい器でもあった。 一方お茶は中国原産。 17世紀初頭の伝播初期にはオランダの東インド会社が独占的にヨーロッパに持ち込んでいた。 中国では紀元前2000年の竜山文化期にすでに『ロクロ成形』が発明され、粘土の塊を回転させながら持ち上げて形づくるため丸皿やお碗型の器がすでに量産されていた。 そして高温で焼かれ世界中のどんな陶器よりも白く硬く美しいこの器は淹れたお茶の色をも頗る綺麗に映し出して見せた。 こうして2つの新しい飲み物はごく当たり前のようににそれぞれの器とともに伝えられ、コーヒーはコーヒーカップで、紅茶はティーカップで飲むものとなった。 後にティーカップには熱くなった器を持ち易くするようにハンドルがつけられ、更に取り分けて冷まして飲むよう深皿が添えられ、これが後のソーサーに変化して現在のティー碗皿になった。』

ナルミのコーヒーカップとティーカップ

お茶とともに伝わった白磁はその産地の名前から『チャイナ』(china)と呼ばれヨーロッパ各国で珍重されますが、その後お茶貿易の独占権を獲得したイギリスでは『ボーンチャイナ』が発明され、お茶文化はますます発展をとげてゆきます。

あらかじめ暖めておいたポットに茶葉と沸かしたてのお湯を注ぎ、お湯の対流で茶葉をしっかり『ジャンピング』させるなどの美味しく紅茶を入れる工夫『ゴールデンルール』や『アフタヌーンティー』に代表される数々のティータイム文化はあまりにも有名ですね。

最近では『紅茶もマグカップでたっぷりと飲む派』も多く見受けられますが、遠い歴史に思いを馳せながらたまにはお気に入りの一杯をティー碗皿でお召し上がりになっては如何。