インドネシア工場見学

ナルミインドネシア 最高級のボーンチャイナを

成長し続ける市場

ボーンチャイナが出来るまで外資系ホテルの進出が続き、富裕層を狙ったレストランの建設も相次ぐ首都ジャカルタ。そうした華やかな場の創出に欠かせないテーブルウェアは今、世界でも温度の高いマーケットのひとつだ。
日本を代表する陶磁器メーカーNarumiは、ここインドネシアに唯一の海外生産拠点を構え、世界の名だたるメーカーを相手に、熱い競争にしのぎを削っている。 日本と変わらぬ高品質の看板商品「ボーンチャイナ」を生み出す同社の生産現場を訪ねてみた。

日本国内だけで作り続けてきた鳴海製陶(以下Narumi)が海外にも生産拠点を持つことを決めたのは1990年代初頭。急激な円高に伴い、輸出に伴うコストが大幅にふくらんだためだ。地元ローカル企業に技術支援してきた経験のあるインドネシアを進出先に選び、95年に現地法人を設立、96年にチカランで工場を稼動。日本の三重工場で国内市場向け、チカランの工場で欧米、アジア諸国などの海外市場向けを生産するグローバル体制が整った。

チカランの工場で生産される品目数は現在、約3,000種に及ぶ。工場が稼動した96年との比較では3、4倍にのぼるというが、急激に増加したのは、ここ2、3年内。一般家庭用、ホテル、レストランなどの業務用、どちらの市場でも、従来好まれた丸く白い伝統の定番ものから、少し角ばったフォルムを取り入れたスクウェアや、レリーフなど凝った装飾をポイント的に施す、ハイセンスなアイテムが好まれるようになった。「世界中の多くの消費者層で人々のライフスタイルが変わり、求めるセンスが上がっている。コストを下げてリーズナブルなものを出すだけでは納得してもらえない時代」とマーケティングダイレクターの堀田武さん。例年、300〜500アイテムの新商品が加わるというから凄い勢いだ。インドネシアで生産し、5年前から市場投入したスクウェアフォルムの「FORTE」は、欧州市場向けに開発されたが、今ではインドネシア国内の百貨店での売上高が常にベスト3に入る人気アイテムとして根付いている。

チカラン工場の生産アイテムは、90%が米国、欧州、東南アジア諸国への輸出、7%がインドネシア市場向け、残り3%が日本向けだ。日本国内での生産空洞化を避けるため、長く日本への輸出は行ってこなかったが、海外市場向けの斬新なデザインが日本国内でも求められることを背景に、5年前から日本向け商品の生産も行うようになった。一方、Narumiグループ全体の売上高割合は、インドネシアでの生産開始以前、日本向けが80%、海外市場向けが20%だったが、現在は日本市場70%、海外市場が30%。海外市場向けの販路開拓がグループを底上げしている。

瀬戸物職人の向上心

瀬戸物職人の向上心

瀬戸物職人の向上心 Narumiの看板「ボーンチャイナ」。その歴史は中国で発祥した磁器の製法がシルクロードを通ってヨーロッパに伝わった1700年代にさかのぼる。島国であったために中国磁器の伝承が遅れた英国で、牛骨の灰「ボーンアッシュ」をやきものの原料の中に加えたことに端を発する。正確には牛骨そのものではなく、牛骨に含まれるゼラチン質を取り除いた後に残るリン酸カルシウムを磁器の原料になる白色粘土、長石、珪石、陶石(カオリン)などと混ぜて焼く製法。素地の結晶が緻密になり、一般の磁器の2〜3倍の硬度となる上、中国古来の白磁よりも温かみある肌合いの「クリーミーホワイト」「ミルキーホワイト」と呼ばれる白色に仕上がる。日本の焼き物の代名詞ともなっている「瀬戸物」の大産地にあったNarumiが、他の産地との差別化を図ろうと、このボーンチャイナの原料となるリン酸カルシウムを使用して独自の製造方法の特許権を取得し、生産、販売を始めたのが1965年だ。

当時は、各国のメーカーが世界的に着目されていたボーンチャイナを自社の商品に取り入れようとした。しかし、ボーンチャイナの素地は形状をとどめる性質(可塑性)が低く成形が難しいことや、焼成時に微妙な窯の温度管理が必要なことから、歩留まりを上げるのは至難の業。ディナーウェアとしての量産にこぎつけ、今でも生業とするのは、ボーンチャイナを生んだ英国以外では日本のメーカーだけとなった。Narumiが誇る日本の焼き物職人の向上心がここにある。

日本と同じ品質

日本と同じ品質 チカランの工場を稼動する際に最重要視したのも、日本と同じ品質でのボーンチャイナ生産を行うこと。そのためには同じ機械、同じノウハウ、同じ原料で、そして、対応できる人間を育てることだ。 工場入り口には、日本でリン酸カルシウムをはじめとする原料を配合し、送られてきた白い坏土(素地)のかたまり(Narumiでは「ケーキ」と呼ぶ)がたくさん。三重工場で使われるものと同じものだ。空気を抜いて、皿、カップ、ボールなどテーブルウエアの大きさに合わせたサイズに練りだした素地を成形する。成形には、ロクロを使うほか、複雑な形状のものでは、石膏型に泥状の素地を流し込み、鋳込んで成形した後に型を外す鋳込みの2種類がある。次々と成形を行い、カップやポットに取っ手をつけていくスタッフの細かな手の動きに思わず見入ってしまう。インドネシア人の手先の器用さは、生産拠点としてこの国が選ばれた一因。例年、30人程度が三重工場で半年〜1年間の研修を受けていることもあり、日本の工場スタッフよりも器用な人材も多数育っているという。

焼き物は「一に焼き、二に土、三に細工」といわれるそうで、いよいよ窯に入る成形後が本番中の本番だ。驚かされるのが、50m近くあろうかという長い巨大な窯。ボーンチャイナたちは、まる一日台車でこの窯の中を通りながら焼成される。温度はちょうど中央部で最高の1250〜1280度に達するが、出口、入り口は低くなっている。窯は24時間稼動。勤務は3交代制で、窯入れ、窯出しがレバラン休暇を除き絶え間なく続けられている。 検査を終えたものは、釉薬がけの工程へ。高温で焼いた後のボーンチャイナは吸水性がゼロなので、スプレーで釉薬をかけた後、光沢のあるガラス状にすべく再び釉焼窯に入れられる。

こうして釉薬がけまで終わった皿やカップにいよいよ模様がつく。模様をつけるのに使われるのは「転写紙」。思い出せる世代の人は、キャラクターの絵がついた紙を別の紙に押しつけてこすることで絵が剥がれてくっつく仕組みになっていた、昔のチューイングガムのおまけを想像してほしい。これを使ってシールのように模様を貼り付けていく。空気が転写紙と素地との間に残らないように丁寧に模様をのばす。三重工場も同様の気の遠くなるような作業だ。きちんと模様がついたら、絵付け窯で焼く。金、プラチナ装飾が入るデザインのものは、さらに筆での絵付けを行い、金付け窯で焼いて仕上げられる。チカランの工場では、模様に応じた転写紙も製造している。

世界的な航空会社のファースト、ビジネスクラスの機内食食器が次々と梱包されていく。ジャカルタ市内では、リッツカールトン、シャングリラ、インターコンチネンタルなどの5つ星ホテルにも多数のアイテムを納品している。海外のホテルからの受注生産は1万個以上の大ロットを短納期で求められることもしばしば、工場内は度重なる生産計画の練り直しに追われるが、現在は嬉しい悲鳴だ。本格的に市場に切り込んでいないインドや中近東、中国などでも販路を広げていく計画だ。目指すのは、世界最高級のボーンチャイナ。その目標は日本の工場もインドネシアの工場も変わらない。

PT. Narumi Indonesia
EJIP Industrial Park Plot 7L-1 Cikarang Selatan、Bekasi 17550
Tel.(021)897 0905
従業員は約600人。日本人スタッフは・・・・社長を含め6人。
名古屋市緑区に本社。

インドネシアでお買い物!

インドネシアでお買い物! Narumiは、ジャカルタのモール「パシフィックプレイス」にインドネシア工場で生産される商品を販売するショールームをオープンしている。日本には全国の営業拠点に併設したショールームがあるが、一般のお客様向けのショップを兼ねた路面店的なムードのショールームは世界中のナルミグループでも初めて。ショールーム内には、家庭向けを約20シリーズ、ホテル、レストランなど業務用の約100品目を展示している。カタログもあり、インドネシア工場で生産する約600品目から好きなアイテムを選んで購入できる。日本人客に耳寄りなのは、一部日本国内で売られているものと同じ商品が、ここインドネシアでは3〜4割引(アイテムにより多少の誤差あり)で入手できること。これはかなりのお得感!
日本帰国までにお気に入りのシリーズを買い集める日本人も多いとか。業務用は受注してから生産するが、家庭用は基本的に即日購入できる。おつかいもの、ゴルフコンペの賞品などに使う場合はギフト用に包装してもらえる。企業の周年記念などに合わせたオリジナルデザインのお皿やカップもオーダーできる。

Narumi Show Room
Pacific Place Mall #L3−35
Sudirman Central Business District(SCBD)
Jl.Jend.Sudirman Kav.52−53、Jakarta Selatan 12190
Tel.(021)514 02712

「Wish2月号掲載」〜ものづくり探訪 Vol.8〜
(※wishはインドネシアで邦人向けに発行されている雑誌です。)